「食べられない」を科学する 〜コップをうまく使えない〜
子どもが「食べられない」現象を、運動機能の発達から紐解くシリーズです。
第一回:スプーン・フォークをうまく使えない
第二回:箸をうまく使えない
に引き続き、
第三回:コップをうまく使えない
を扱います。
参考書を読んでいて感じるのは、以前「偏食」について調べているとき、見え隠れした「運動発達の問題」です。環境とか性格の問題と考えがちですが、ある行為・動作ができるためには、それ相応の運動発達レベルが必要であることを痛感しています。
<基礎知識>
▶ 水分摂取方法の発達の順番
①哺乳:直接乳首やニップル(哺乳瓶の吸い口)
・・・「チュッチュッチュッ」と呼吸と吸啜(吸い込む動作)と嚥下(飲み込む動作)を反射的に同時に行い、上を向いてもむせずに飲める。
②スプーン
③コップ
・・・吸啜がなくなり、呼吸と嚥下を分けて行う。吸啜の代わりに呼吸を止めて水分を吸い込む。この時期になると、顔を少しだけ下に向けて飲むようになる。
呼吸と水分の取り込みは、はじめはうまくいかないが、こぼしながら練習していくことでうまくなっていく。かぜ気味や鼻炎などにより鼻が詰まっているときは飲みにくくなる。
④ストロー
▶ コップから飲ませる前に確認すべき動作
・両手でコップを持てる。
・ふだん口を閉じていられる。
・よだれが出なくなっている(飲み込める)。
・むせないで飲める。
▶ よだれやむせが多い場合は要注意
・自分のよだれが飲めない、むせが多いと誤嚥(誤って気管や肺に食物や異物が入り込んでしまう)の可能性がある。
・むせ防止には、増粘剤でとろみをつけることが有効なことがある。
▶ こぼしてもコップをあきらめない
・こぼすからといって、コップ飲みができる前にスパウト(乳首以外に慣れるために工夫されている飲み口)やストローに頼りすぎると、口腔機能の発達を妨げる。
<トラブルへのアドバイス>
▶ 両手がうまく使えない → 両手で持ちやすいコップを
・両手で持てる取っ手付きのコップがよい。取っ手のないコップで直径が大きい場合は、親指が開けずにすべての指がそろった状態になるため、支えが不十分になる。
▶ 感覚の未発達 → 水分を唇で感じ取る経験が必要
・ニップルやストローからだと、水分を唇で感じ取る経験ができない。
・コップを使う前に横に向けたスプーンやレンゲから上唇にお茶などの水分が当たるようにして、感じ取る経験をさせる。
・水分を感じ取れるようになるとタイミングよく吸い込めるようになっていく。
・味覚の発達のためにも、はじめはジュースなどを控え、麦茶やほうじ茶や水などを選ぶ。
▶ 力のコントロールが苦手 → こぼしても繰り返しコップから飲む動作を行う
・こぼしてもよい衣類や敷物を用意する。
・安心して繰り返しコップから飲む動作を行うことで、力のコントロールはついていく。
・勢いよく口に運びすぎてうまく飲めない場合は、軽く手を添えて支えるとよい。
▶ ものを見る力が弱い → 透明のコップを使う
・コップの中に入った飲み物を見えやすくするため、透明のコップを選ぶ。
・どんな飲み物がどれだけ入っているかを目で確認できることで、コップに入っている飲み物の味や口に入ってくる量などが予測しやすくなる。
▶ 体のイメージが捉えにくい → 息を吹くことも合わせて見守る
・呼吸を止めて飲み物を吸い込むことは、子どもにとってとても難しい動作。
・はじめは吸わずにブクブクと息を吹くことも併せて行っても構わない。お風呂などで水面に口をつけて、ブクブクと口から息を吹き出すような遊びもよい。吹いた後に吸い込むことができる場合もあるので、様子を見守るとよい。
・吸い込むのがうまくいかないからといって、流し込むように飲ませてはいけない。
<参考>
・発達が気になる子への生活動作の教え方(中央法規、2013年発行)