「食べられない」を科学する 〜箸がうまく使えない〜
前項目「スプーン・フォークがうまく使えない」を書いていて、子どもの偏食・好き嫌いの背景には「動作の発達」とともに、「適切な食べる環境と食材の提供」が基本にあることを感じました。
今回は「箸をうまく使えない」場合を扱います。
イメージすると分かりますが、スプーンやフォークは握ることができればなんとか使えますが、箸は指先を器用に動かす必要があり、高度な能力が必要であることが窺えますね。
そのような運動能力が獲得されるのは4歳以降です。

<基礎知識>
▶ 手の運動の発達と箸
(2歳以前)早い子どもは2歳前から箸を使い始めるが、握るだけで日本の箸で挟んだりすることはできない。
(2〜3歳頃)スプーンや箸を「手指回内握り」(上図参照⇧)できるようになるので、親としては正しい持ち方を教えたくなるが、まだ早い。
(3歳半〜4歳頃)スプーンや鉛筆を「静的三指握り」(上図参照⇧)で持つようになるため、この段階になってから正しい持ち方を教えるとよい。しかしこの段階でも、まだ箸が交差したり、長い時間正しく箸を持っていることは難しいので、スプーンなども併用しながら部分的に箸を使うとよい。・箸を強要すると食事自体を嫌がるようになるので注意が必要。
(4歳半〜6歳頃)スプーンや鉛筆を「動的三指握り」(上図参照⇧)できるようになり、この時期に正しい持ち方を教えていく必要がある。上の箸を親指と人差し指、中指で鉛筆のようにつまみ、下の箸を薬指で支える。親指は上の箸と下の箸を抑える働きをする。
▶ 箸の使い方を教える前に確認しておきたい動作
1.鉛筆やスプーンを三本の指で持てる。
2.親指と人差し指で丸が作れる。
3.ジャンケンのチョキができる。
▶ 箸を持ったままフラフラしない
・箸を使い始めた頃、箸を持ったまま歩かせると転んでケガをすることがあるため、必ず着席した状況で使わせる。
▶ 「しつけ箸」は使う?使わない?
・ジョイントの付いたしつけ箸は、手を閉じたり開いたり(グーパー)の動きで箸を開いたり閉じたりする。
・そのため、開くときに親指を開く方向に動かすクセがついてしまい、いつまで経っても通常の箸に移行できなくなることがある。
・適切な時期から、通常の箸で正しい持ち方を教えていくことが大切。
<トラブルとサポート>
▶ 両手がうまく使えない → 手の大きさに合った安定した器で
・手の大きさに合った器とは、中指と薬指はお椀の底に、親指は縁の近くで持ったときに安定して支えられる大きさのものにする。
・箸や器をうまく操作できないと「かき込み食べ」になるため、そこの広い安定した器を机の上に置き、箸を持つ反対の手で支えるところから練習するとよい。
▶ 感覚の未発達 → 指一本ずつの感覚を育てる
・箸は非常に複雑な動きを必要とするため、指一本ずつの皮膚感覚の発達が重要。以下のような遊びを取り入れるとよい;
(例)あやとり
(例)目隠しされた状態での子どもの指を一本ずつ触れてみて、どの指が触れているか当てる遊び
▶ 力のコントロールが苦手 → 箸を使うのは硬いものから
・力の入れ具合が分からないと、やわらかいものは箸で挟まず、刺して使うようになる。
・やわらかいもの(豆腐など)はスプーンで、つまんでも崩れないものや硬いものから箸で食べるようにしてみるとよい。
▶ ものを見る力が弱い → 食べ物と器の色は違う色に
・視力に問題があると疑われる場合は、眼科受診が必要。適切な時期に対応しないと視力自体が発達しなくなる。
・視力が弱かったり、形を判別しにくい場合には、箸は使いにくい道具になる。
・食べ物は器に対して少量ずつ載せ、食べ物と器の色が異なるようコントラストをつけると見やすくなる。
▶ 体のイメージが捉えにくい → 一本の箸で刺して食べることからはじめる
・箸をどのように持ったらいいのか分からない子どもがいる。
・静的三指握りや動的三指握りが鉛筆で可能であれば、まずは一本の箸で刺して食べられるものから始めるとよい。
・次に、開閉する必要の少ない麺類をひっかけて食べることにトライ。
・箸を使う自信がついてきたら、四角く切ったホットケーキなどを少量ずつ箸でつまんで食べることにトライ。
<参考>
・発達が気になる子への生活動作の教え方(中央法規、2013年発行)