「食べられない」を科学する 〜スプーン・フォークがうまく使えない〜
街の乳児健診で相談を受ける内容は、圧倒的に「かんしゃく」と「偏食」です。
それに対応すべく、しばらく前に「偏食」について調べたことがありました。
すると、偏食はそのレベルにより2つに分けて考えた方がよいと感じました。
1.好き嫌い:食べられないものが少なく、健康に問題がないレベル。
2.偏食:食べられるものが少なく、健康に支障が生じるレベル。
興味のある方はこちら(子どもの好き嫌いと偏食)を参照してください。
2の偏食は医学的介入が必要です。
解説書を読むと、味付けの工夫というレベルではなく、発達の問題として捉えて指導していくことを知り、膨大な知識が必要であることを知りました。
その沼にはまり、抜け出せなくなり、結局は管理栄養士の在籍する病院へ紹介せざるを得ない状況です。
先日、某学会で神経発達症(旧名:発達障害)についてのシンポジウムを聴講しました。
その中の一つに、作業療法士さんのお話がありました。
「うまく食べられない子どもの作業療法」という内容を聞いていて、驚きの発見がありました。
「食べる」という行為を6段階の作業として捉え、その子はどこでつまづいているのかを分析し、
「な〜んだ、6段階のうち4番目ができないだけ」であることを突き止め、それをサポートすることにより、見事に解決したのです。
目からうろこが落ちました。
そして、「発達障害に対する作業療法」の書籍を何冊か購入し読んでみました。
備忘録としてポイントを引用・抜粋させていただきます。
<基礎知識>
▶ 生活動作の中で始めて見につける食事動作
▢ 食事は感覚や手の発達を促す
・食べ物の名前とともに、味や感触を覚えていく。
・ものの大小、色などの概念も学んでいく。
・手づかみで食べることは、細かなものをつまめる動作につながる。
・手に食べ物が付いても、洗えばきれいになることも覚える。
・スプーンが使えるようになると、次に箸がうまく持てるようになり、それは鉛筆の正しい持ち方にも影響を及ぼす。
▢ 食事の姿勢が自己統制の発達を促す
・食事中は席に座って食べるというマナーが身につき、この力は自己統制の発達を意味する。
・この力がつくことで、集団生活の中でもうまく過ごせるようになっていく。
▶ 気をつけたい「ジュースの飲み過ぎ」
・食事を思うように食べてくれない子どもの中には、おやつを食べ過ぎていたり、ジュースや牛乳などを飲み過ぎていることがある。
・エネルギー補給という意味はあるが、言うことを聞かせるためや、うるさく欲しがるのをやり過ごすために与えすぎてはいけない。
・食事やおやつは定時に食べることが非常に重要。お腹を空かせて食事の時間にしっかり楽しく食べられることを目標にする。
・食事と食事の間に何も食べない時間を設けることも重要。食べない時間をつくって空腹感が得られるようにすることで、食事の時間にしっかりと食べられるようになる。
・食べたいときにだらだら食べることを許していると、常に血糖値が高い状態になるため、空腹感が得られにくくなる。そして食事量が減ったり集中して食べられなくなり、席を立つなどの問題行動が出やすくなる。
・問題行動を注意されることで食事場面がつまらなくなるという悪循環が発生する。
・野菜嫌いの子どもに、代わりに野菜ジュースを飲ませることはよくない。多くの野菜ジュースには果汁が含まれており、それでお腹がいっぱいになってしまう。
・形や味付けを工夫したり、一緒に料理をすることで、だんだん野菜を食べられるようにしていくのがよい。
▶ スプーン・フォークの使い方を学ぶ
▢ 確認しておきたい動作
✓ 小さなものを人差し指と親指でつまめる
✓ ジャンケンのチョキができる。
✓ 鉛筆を三本の指で持てる。
▢ 手の機能の発達(スプーン、箸、鉛筆の握り方)
(1〜1.5歳)手掌回内握り(スプーン、箸)・手掌回外握り(鉛筆)
・・・主に肩と肘の動きですくうため量の調節が難しく、すくい過ぎたりする。
(2〜3歳)手指回内握り
・・・前腕に返しが加わった動きですくう。
(3.5〜4歳)静的三指握り
・・・脇がしまり、食べる姿勢が整ってくる。
(4.5〜6歳)動的三指握り
・・・手首と指の動きが出てくるので、すくう量の調節がうまくなり、こぼしが少なくなってくる。
→ 持ち方を先に進めるのではなく、こぼしが少なくなってきたら、次の段階の持ち方を試してみるのがよい。

・子どもは6ヶ月頃から手づかみで食べはじめ、1歳頃からスプーンなどを使い始め、2歳半頃になるとこぼさずにうまく食べられるようになる。
▶ 食事環境〜テレビは消して食事を一緒に楽しもう
・一緒に食べる大人がテレビや新聞を読んでいたのでは、子どもは食べることに集中できない。
・椅子と机が高すぎたり、低すぎたりすると、うまくすくえない。足の裏全体が床につく椅子と、肘を曲げたときにちょうど肘から手までが上に乗る高さの机を用意する。
・すくう先端部分が平たく、握りやすい太さのスプーンを使うとすくいやすい。
▶ 手づかみ食べはどんどんさせよう
・手づかみ食べはスプーンなどの操作が確立するまでは一般的にみられる行為で、禁止すべきものではない。
・つまんで口に運ぶことは、手の機能の発達にとって有益で、結果的にスプーンなどの操作がうまくなっていく。
・食べたいという気持ちを大切にして、はじめはこぼしてもよい環境を用意し、好きな持ち方で食べさせるのがよい。
<原因別サポート法>
▶ 両手がうまく使えない
・スプーンを持っていない方の手で茶碗などの器をうまく支えたり、動かしたりすることも重要。
・支えがうまくできないときに支えを強要すると、スプーン動作自体がおそろかになってしまう。このようなと場合には、滑り止めが付いた器や、滑り止めマットなどを利用する。
・手で器を持って食べないと、口を器に近づけて食べる「かき込み食べ」になってしまう。姿勢が悪くなるだけでなく、一口の量の調節が難しくなり、丸呑みしやすくなる。
▶ 手にご飯つぶがつくのを嫌がる〜感覚の未発達
・手にご飯つぶがつくことを嫌がる子どもの中には、触覚に過敏さのあることが考えられる。手で触れたものを判別する力が弱く、指を上手に動かせない。
・ふだんから砂遊びや粘土など、手に触れる遊びを楽しくできる環境を提供する。無理矢理ではなく、少しずつ慣らしていくことが大切。
▶ 力のコントロールが苦手〜洗濯ばさみを使って練習
・力が弱すぎたり、逆に入りすぎたりすることでうまくスプーンを持てなかったり、操作できない場合がある。力が弱いと指先でつまむことが苦手だったり、うまく固定できない。
・親指と人差し指で洗濯ばさみを付けたり外したりする指先の遊びを取り入れると、スプーン動作がうまくなる。
・力が入りすぎる場合には、そっと積み木を積んでみたり、粘土で形を作る遊びなどを行うとよい。
・スプーンの柄を太いものにすることで、うまく持てるようになることもある。
▶ ものをみる力が弱い〜食材を見やすくする工夫を
・形や動きを捉えにくい子どもは、目の前にいくつもある食材の中の一つの食材に注目しづらい傾向があり、複数の食材を山盛りにすくってしまい、食べこぼしにつながりがち。
・疑わしいときは視力を確認し、必要に応じて医療的介入を行う。
・食材を器に盛るときは、おかずごとにお皿に取り分けるなど、見やすくする工夫が大切。器の色を食材と違う色にして、コントラストをはっきりさせることでも見やすくなる。
▶ 体のイメージが捉えにくい〜スプーンを動かす方向をわかりやすく
・体のイメージを捉えにくい子どもは、どのようにスプーンを持ったらよいか、どのように動かしたらよいかがわかりにくくなる。
・指先だけでなく、全身を動かす遊びや、三輪車や自転車、なわとびなどで身体感覚の発達を促す。
・器は小鉢のように壁のあるものにすると、すくうときにスプーンの先が壁に当たるため、動かす方向が分かりやすくなり、食べ物をうまく口へ運ぶことができる。
<参考>
・発達が気になる子への生活動作の教え方(中央法規、2013年発行)
・発達障害の作業療法・実践編・第三版(三輪書店、2019年)