神経発達症とその周辺

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神経発達症児のトイレトレーニング

患者さんから相談を受けました。

この春に小学生になるけど、トイレトレーニングが進まない、まだ大便をオムツの中にしてしまう、とのこと。

小児科医の私の頭の中は「・・・」状態。

こだわりや感覚過敏の影響で、順調に進まないことは予想できますが、具体的にどうすればよいのか分かりません。

昨年参加した学会のシンポジウムで聴講した作業療法士の話を思い出しました。みんなと同じように座って食事ができない年長児の相談を受け、椅子に座って食べ物を口に入れるまでの動作を「作業」と捉え、6ステップに分けてその子がどこでつまづいているのか評価し、6つのうち1つだけできないことが判明、そこをサポートしたら見事解決した、という内容でした。

保育士さんや作業療法士さんの方が詳しいと思われますが、小児科医の私にできることはないのか、調べてみました。

検索すると、やはりリハビリを担当する療法士さんや心理士の記述が多く、小児科医が書いた記事は見当たりませんでした。

昔、「赤ちゃんの心配事」という記事を書くときに育児書を読みあさったことがあるのですが、その時に書いてあった内容とほぼ一致しますね。

 

 

▶ トイレトレーニング開始の目安

・・・大脳皮質がある程度まで発達しないとできない作業であり、下記①〜⑦ができないレベルではまだ早い。

①トイレまで一人で歩いて行ける、トイレ(補助便座やおまる)に座ることができる。

②昼間の排尿間隔が2時間〜2時間半以上。

③尿意・便意を感じることができる。

④言葉で意思疎通ができる、簡単な言葉での指示が理解できる。

⑤表情や身振り、ことばで尿意や便意を伝えられる。

⑥自分である程度、衣類の着脱ができる。

⑦大人のまねができる。

 

▶ 保護者の心得4箇条

・・・トイレトレーニングにあたっては以下の4つが大切

①焦らない

②怒らない

③脅さない

④罰しない

 

▶ トイレトレーニングのステップ

【STEP1】排泄に関わる言葉の意味が分かるようにする

・乳児期から「オシッコ出たね」「ウンチ出たね」と言葉をかける。

・「オムツ替えたら気持ちいいね」と言い、清潔にすると気持ちがよいというイメージを作る。

【STEP2】トイレに行く、座る

・トイレでおまるや補助便座に座ることを習慣づける。

・「トイレに行こう」と言って、まずは一日に1〜2回、ズボンをはいたまま、30秒でもいいからおまるや補助便座に座ってもらい、慣れさせる。

・数日〜1週間は、1時間ごとにオムツをチェックして排尿の有無を記録し、排尿の確率が高い時間帯を見つけ、その時間帯にトイレに連れて行くとよい。

・上記が難しければ、朝・お昼寝の寝起き・食事後などのタイミングで連れて行く。

【STEP3】成功したらほめる

・おまるや補助便座で排泄できたら、その場でほめる。大げさにすると逆にプレッシャーになるので抑え気味の表現(例:笑顔で「やったね!」&指でOKサインを作る)で。

 

▶ 注意事項

①行き詰まったら「ひと休み」も必要

・いわゆる「赤ちゃん返り」やクラス替えや引っ越しなどの環境変化で、トレーニングが進まなくなったり、元に戻ることもある。そのようなときは無理せずひと休みを。

②トレーニングパンツの選択

・布パンツの前段階で使うトレーニングパンツには、布製と紙製がある。

・失敗の多い子には紙製がオススメ。

・子どもに選ばせるとモチベーションにつながるかもしれない。

 

▶ 神経発達症児への工夫

①感覚過敏がある場合

・感覚過敏があるとトイレを嫌がることが多い。理由として下記要素が挙げられる;

 ✓ 芳香剤の匂い(嗅覚)

 ✓ トイレを流す音(聴覚)

 ✓ 流したときの水しぶきや跳ね返り(触覚)

 ✓ 手を乾かすジェットタオルの音(聴覚)

 ✓ 足がつかなくてブラブラする

 ✓ 座ったときのお尻の感覚(触覚)

 ✓ 狭い空間(視覚?)

 ✓ 暗い照明(視覚)

・トイレでの子どもの様子を観察して、何が嫌なのかを見極め、その次に、子どもにとって嫌な刺激や感覚をできるだけ減らす工夫(環境調整)、そして感覚になれていくためのサポートをする。

(例)「パンツを履いたまま便座に座る」 → 「素肌で便座に座る」 → 「水を流す音だけを聞く」など、環境に徐々に慣れさせる。「におい」は防臭剤、「明るさ」は電球の色などで対応。

・逆に感覚鈍麻があると、トイレに行くタイミングがつかめないことがある。尿意・便意に気づいたときにはすでに手遅れで焦ってしまいふだん通りにできない。

 → 実際にトイレをする前に、練習を繰り返して「からだの動かし方を定着させる」ことが必要。焦っているときに指示しても混乱して失敗してしまいがち。

②こだわりがある場合

排泄に関しては、

 ✓ オムツでしか排泄しない(パンツを嫌がる)。

  → 今までオムツに自分の好きなタイミング・場所・体勢でしていたのに、急にパンツに替わり、トイレでしなければならなくなることは、特性のある子どもにとっては大きなストレス。

 ✓ (場所)お風呂やカーテンの陰で排泄する、自宅でしか排泄しない。

 ✓ (姿勢)決まった姿勢(例:四つん這い)でしか排泄しない。

 ✓ トイレットペーパーの種類やにおいにこだわりがある。

などのこだわりがあることがある。

強引に進めずにスモールステップで進める(段階的に「できる」範囲を増やしていく)とよい。

(例)「オムツでしか排泄しない」なら、オムツの上にパンツを履かせて少しずつパンツに慣れる、次に曜日や時間帯を決めて時間限定でパンツだけで過ごしてみる・・・など。

③運動機能に課題がある場合

・腹圧が弱い。

 ✓ 筋力が弱く排便時のいきみに必要な腹圧が不十分なことがある。

  → 大人が腹部を少し押して上げる。

  → ジャンプなどの活動を生活や遊びの中でたくさん取り入れて筋力をつける。

 ✓ 便座に座って力が入れられない。

  → トイレに行きたいとき以外のタイミングでオムツをしたまま「トイレに座る」「踏み台を使う」という動きを繰り返し練習する。

・お尻が拭けない

 ✓ ボディイメージが未完成で、お尻を拭くのが苦手。

  → トイレットペーパーを持たせた手を大人が誘導して「ここを拭くよ」と肛門の位置を根気よく繰り返し教える。パンツを履いたままお尻を拭く練習。

  → 背中やお尻など自分では見えないところにシールを貼り、それを剥がす遊びはボディイメージを高めるよい活動になる。

④その他の課題

・遊びに熱中して失敗する。

 ✓ ふだんはトイレに行ける子でも、遊びに熱中すると尿意を感じられず失敗する子どもは多い。

  → 周囲の大人が一定の間隔で声をかけ、一定間隔でトイレに行くことを習慣化させる。

・トイレットペーパーを扱えない。

 ✓ トイレットペーパーをどこでカッとしてよいのか分からず延々と引っ張り出す。

  → こども用に適度な長さに切ったペーパーを用意しておく。

・拭き残りを気にする。

 ✓ 排便後の拭き残りを極度に気にしたり、便が手につくことを必要以上に心配することも。

  → お尻の清浄剤を使う

  → 子どもが安心できるルールを決める。

 (例)ペーパーを5枚使って5回ふき取る、使い捨て手袋を使う、大人が仕上げをする、など。

 

▶ トイレトレーニングのコツ

トイレが苦手な理由を踏まえて、スモールステップで段階的に、かつ繰り返し練習することがポイント。

・トイレで排泄する意味が理解できない子ども

 ✓ オムツのままでいること・おもらしをすることが「よくないこと」だと分からない。

 ✓ なぜいやな思いをしてまで練習をしなければならないのか分からない。

 → トイレをポジティブなイメージに変える。「好きな空間」「うれしいことが起きる場所」にしたり、「トイレでオシッコできるのがカッコいい」と理解させる。

(例)トイレに好きなキャラクターのポスターを貼る、トイレに行けたらごほうびシールを挙げる、など。

・段階的に慣らしていく

 ✓ 「出る時に気づく」からスタートし「出そうなときに気づける」ようになることを目指す。

 ✓ 「オシッコが出てしまった後でも、一回トイレには連れて行く」ことで「オシッコはトイレでするもの」と理解させる。

・失敗ありきで練習する

 ✓ おもらしを注意されたり、保護者がガッカリした表情をすると、自己肯定感が下がり、トイレに抵抗感や恐怖心を抱いてしまう。

 ✓ トイレに間に合わず失敗した場合に「隠す」ようになると学びが進みにくくなる。

 ✓ 小さなことでも成功すればすかさずほめるようにする。小さな成功体験を繰り返し、「こうすればよい」という感覚を徐々に身につけされていく。

 

 

<参考>

発達障害・発達特性のある子の【トイレトレーニング】の方法

原哲也:言語聴覚士/社会福祉士(ココカラ)

発達障害の子どものトイレトレーニング

北川庄治:公認心理士(ハッピーテラス)

自閉スペクトラム症の子どものトイレトレーニングはどうすればいい?

Mizuki:認定心理士(子どもトイレ研究所)